会員校の特色ある取り組み

広島国際大学看護学部看護学科

「瀬戸内イキイキプロジェクト」 活動報告

「瀬戸内イキイキプロジェクト」 活動報告

はじめに
 本学は健康・医療・福祉分野の総合大学として、「時代と地域が求める真のフィールドスペシャリスト」の育成を目指している。このような大学で学ぶ学生たちの強みを生かし、地域社会に笑顔と健康を届ける学生団体「瀬戸内イキイキプロジェクト」の活動について報告する。

1.瀬戸内イキイキプロジェクトとは
 高齢化が進む瀬戸内海の島嶼部で、島の人々が生き生きと暮らし続けるための生きがい支援と地域活性化を目的とした課外活動団体であり、5 つの目標を掲げている。
① 瀬戸内の島の高齢者が住み慣れた地域で自立した暮らしを続けられるよう、健康面のサポートを行う
② 島の高齢者と交流し、元気と笑顔の場づくりをする
③ 島の特徴を知り、島での暮らし方や高齢者の思いを理解する
④ 島の魅力をSNS などで紹介することにより、地域活性化に協力する
⑤ 活動を通して主体性やチームワーク力、課題解決能力などの社会人基礎力を身につける
 メンバーは看護学科の他、薬学科と医療栄養学科の学生で構成され、主に2 年生が幹部としてプロジェクトを運営している。顧問は看護学科教員2 名である。活動の資金は大学や自治体からの助成金で、毎年大学が募集する「地域活性化支援プロジェクト」に応募し採択されている。活動の拠点は豊田郡大崎上島町と呉市豊浜町で、社会福祉協議会やまちづくり協議会と連携して活動している。

2.プロジェクト発足の経緯
 看護学科の学生が老年看護学実習で大崎上島町に住む高齢者と出会い、島で暮らす人々が培った生活の知恵に学び、高齢者が生き生きと暮らす活力の源は何かという興味を抱いたことから始まった。活動は2024年で11 年目を迎えた。

3.活動内容
1)ふれあいサロンへの参加
 プロジェクトの主軸となる活動で、定期的に開催される島のふれあいサロン(高齢者の介護予防や生きがいづくり、孤立防止などを目的とする交流の場)に参加し、学生による健康教育や健康チェック(血圧、脈拍、SpO2、握力などの測定)、健康レシピの紹介、会食を行う。健康教育は学生が作成したスライドやパンフレットを用い、転倒予防や認知症予防、災害時の備えなど高齢者に役立つ健康情報を提供している。健康レシピは本学医療栄養学科教員の指導を受けながら学生が考案したレシピで、①健康教育に関連した内容にする(例:便秘予防の健康教育に基づいた、食物繊維の多い食材を使用したレシピ)、②島の特産品を用いる、③高齢者の特徴や生活に合わせ材料や手順を簡潔にする、といった工夫が施されている。

2)島のイベントへの参加
 島のお祭りでは、プロジェクトの活動紹介とともに、島の特産品を使用して学生が考案した「ひじき焼きそば」の試食を提供している。また、グラウンドゴルフ大会やみかん狩りへの参加を通じて、島の文化に触れながら高齢者との交流を深めている。

3)島の理解を深める活動
 島と島で暮らす人々を理解し、島の魅力と課題を発見することが目的の活動である。これまでは既存の資料を用いて学内でグループワークを行っていたが、2024 年度は島でのフィールドワークに変更し、ふれあいサロンや島のイベントに参加する前に実施した。実際に現地を訪れ様々な景色を見ながら町を探索することで、学生たちは活動の対象となる高齢者の暮らしを具体的にイメージできるようになり、地域の課題やニーズに気づきやすくなった。この経験は、ふれあいサロンや島のイベントで対象者と会話する際のきっかけになるだけでなく、今年度の健康教育にも繋がりをみせた。

4.活動を通して得られたもの
 対象である高齢者は、「久しぶりに若い人たちと交流できて楽しかった」「元気をもらえた」など、学生との交流に対する満足度が高い。活動の拠点である両島には中学校または高校までしかなく、普段、触れ合うことのない大学生との世代間交流は島の高齢者にとって貴重な時間であり楽しみの一つになっていることが伺える。他には「血圧が高めなので気を付けたい」や「健康教育で教わったことを実践したい」など、健康意識の高まりを示す反応もあった。
 一方で学生たちは、高齢者の特徴に合わせたコミュニケーションの取り方や分かりやすい資料作成・説明の工夫など、対象者の立場に立って考え行動することの重要性を学んでいた。また、「ありがとう」「また来てね」などの言葉をかけられることで、人の役に立ち感謝されることの喜びを感じていた。その他にも、リーダーを務めた学生は、報告・連絡・相談の徹底や計画性・主体性を持って行動することの大切さを学んでいた。

おわりに
 島嶼部に暮らす高齢者を対象とした地域貢献活動は、対象者と学生双方にとって意義深い活動である。学業や臨地実習との両立が難しいといった課題もあるが、貴重なこの活動を末永く続けていきたい。