大阪医科薬科大学 看護学部
2025年3月17日から26日にかけて、本学教員2名がベルギーおよびオーストリアの3大学を訪問し、国際的な看護教育の実際と今後の連携可能性について協議した。
まず、Thomas More University of Applied Sciences(ベルギー)では、看護・助産教育の概要説明を受け、うつ病患者のシミュレーション授業を見学した。学生の交流を促す空間設計や、対象者との対話力を重視した教育が印象的であった。「International Days」では各国からの看護系教員と交流し、本学からは「日本の医療における多様性理解」をテーマに講演を行った。折り紙を通じた文化紹介も好評であった。Antwerpキャンパスでは「superdiversity」に関する講演やグローバルヘルス教育を学び、サマースクールやCOIL(Collaborative Online International Learning)等の今後の連携可能性について協議した。
次に、Salzburg University of Applied Sciences(オーストリア)を訪問した。同大学は自然環境に恵まれ、学生のウェルビーイングを重視する設計がなされていた。Fidelity・VR・Actingの三本柱によるシミュレーション教育が特徴で、カナダ企業と共同開発した500以上のVRシナリオを用いて教育している。精神看護学領域では、人権に配慮した制度(身体拘束時の報告義務など)が整備されている一方、訪問看護やデイケアは課題が残る。今後はオンラインモジュールにおける協同を通じた連携を検討していく。
最後に、St. Pölten University of Applied Sciences(オーストリア)を訪問し、約4,000名の学生を擁する多学部大学での教育体制を視察した。看護学部ではVRを活用した教育や、オンラインモジュールを必修とした国際的カリキュラムが整備されている。英語での講義は一部に限られるが、peer tutoring形式での短期交流が可能であり、アジア圏からの学生受け入れにも関心を示していた。2025年9月には「Digital Health Care」修士課程が新設予定であり、国際共同プログラムとして注目される。附属病院では透析・救急・ヘリポートを備えた充実した医療体制を確認できた。
今回の訪問を通じて、教育内容の多様性、学生の主体性を尊重する文化、そして地域や他分野との協働の重要性を再認識した。今後は、サマープログラム・オンライン講義・短期派遣等を通じて、持続的な学術交流の発展が期待される。

