暮らしの場で学ぼう!~看護職員 卒後フォローアップ研修~

北海道医療大学看護福祉学部長 山田律子

病院完結型から地域完結型ケアへの転換が進む中、療養者の「暮らし」を重視した看護の重要性が高まっています。北海道医療大学では、日本私立看護系大学協会の地区活動プロジェクトとして、2024年度に「暮らしの場で学ぼう!~看護職員 卒後フォローアップ研修~」を実施しました。本研修は、在宅看護実習の経験が不足している卒後1~5年目の看護職員を対象に、在宅療養者と家族の生活や健康の実際を学ぶことを目的としました。

【大学協働体制と訪問看護ステーションとの連携による学びのネットワークづくり】


主催は北海道医療大学看護福祉学部で、天使大学、北海道科学大学、日本医療大学、北海道文教大学の4校と連携して実施しました。大学間の協働体制のもとで、札幌市および近郊の訪問看護ステーション(北海道医療大学訪問看護ステーション、訪問看護さくらステーション、札幌ひがし徳洲会訪問看護ステーション、禎心会東・北の各ステーション)で研修を行いました。卒業生を中心に27名が応募し、25名が参加しました。

【暮らしの場に同行し、看護の本質を学ぶ】


2024年11月のオリエンテーションを経て、12月から翌年3月にかけて同行訪問が実施されました。研修生は訪問看護師に同行して在宅療養者の家庭を訪問し、生活の様子や支援の実施を観察。療養者や家族の生活に寄り添う看護のあり方を体験的に学びました。
2025年3月10日には報告・振り返り会を開催し、22名の研修生が体験を共有しました。グループディスカッションでは「病棟では見えにくい生活の実際を知ることができた」「訪問看護の幅広さと連携の重要性を実感した」など、多様な学びが語られました。

【参加者の高い満足度と今後の展望】


研修後のアンケートでは、研修全体の満足度が97%と高く、「学修効果があった」「学習目標が明確であった」「同行訪問が自分の役に立った」との回答がいずれも100%を占めました。自由記述では、療養者と家族の生活や価値観を尊重する看護の大切さを再認識した声が多く寄せられました。「病棟での退院支援に在宅の視点を取り入れたい」「患者が望む生活を実現できるよう支援したい」といった意欲的な声が多く、参加者自身の看護観の進化やキャリア形成への前向きな変化がうかがえました。

【大学と実践をつなぐ新たな架け橋】


 本研修は、大学間および臨床現場との協働によって、教育と実践を結びつける新たなネットワークを構築する取り組みでもあります。今後は、地域の医療機関や訪問看護ステーションとの連携をさらに強化し、病院から地域へと切れ目のない看護の提供を推進していくことが期待されます。

(写真)報告・振り返り会の様子。グループディスカッションでは、訪問で得た学びや発見を共有し合い、互いの経験から新たな気づきを得る姿が見られました。参加者は「生活者の視点から看護を見直す貴重な機会になった」と語り、笑顔で記念撮影を行いました。

【謝辞】本プロジェクトは一般社団法人日本私立看護系大学協会の地区活動プロジェクト助成を受けて実施したモデル事業です。助成により、看護職員が「暮らしの場」で学びを深め、地域包括ケアに貢献するための有意義な機会を創出することができました。ここに深く感謝申し上げます。